ほめて伸びる

長尾周格先生の投稿です。
理論的で素晴らしい内容です。


ほめて伸びる

たいていの人間は、ほめて伸びますから、どんどんほめましょう。逆に叱ったり怒ったりしても、対して効果はありません。親は子どもが騒いだり、行儀が悪いと怒ったり叱ったりしますけど、静かにしていたり、行儀良くできた時はあまりほめません。これじゃまっすぐ育たないのは当然です。

でもこういうことを書くと、反対意見を言う人が必ずいます。例えば指導者は、「いや、ほめて伸びるなんてありえない。むしろ叱った方が良くなるのは、現場で指導していればよく分かることだ」なんてことを言います。某ヨットスクール主催者はそう信じて疑わなかったようです。

しかしこれは、人間には好不調の波があること、運不運というものがあることを無視しています。同じことを何度も繰り返し行わせると、上手くできるときと上手くできないときがあります。その人物の実力はその波の平均になるところなのですが、いつも平均通りになるなんてことは通常あり得ません。

例えばゴルフトーナメントの初日に好スコアを出した選手は、次の日も好スコアを期待されますが、たいていは初日よりスコアが悪くなります。これに対し初日で大きく悪いスコアを出した人は、次の日にはそれより良いスコアになることが多いのです。これを「平均回帰」の法則といいます。

平均回帰の法則から見れば、練習や訓練でたまたま上手くいっても、次の時は平均に回帰しますからそれより落ちます。だから上手くいったときにほめても無駄と感じがちです。その一方で上手くいかなかったときは次の時に平均回帰でそれより良くなることが多いのです。これは叱る、叱らないに関係なく起こります。それでも上手くいかなかったときに叱った指導者は、次回良くなったのを見て、叱った効果があったと考えがちなのです。

ですから物事は直近の出来だけを評価するのではなく、長期的に見て平均自体が上向くように導いてあげる必要があるのです。平均回帰を理解すれば、上手くいかなかったときに叱っても意味がないし、上手くいったときにほめても次また上手くいくとは限らないが、本人のモチベーションを高めることはできると気づくでしょう。

行動経済学は、このような人間の思い込みや勘違いを正してくれる知恵を与えてくれます。僕は根性論とか、精神論とかは大嫌いです。論理的かつ合理的な方法で、最小の努力で最大の結果が得られることを目指します。人はほめて伸びる、こんな基本的なことでも、論理的に考えると結構深いんですよ。


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